寝る前、ふと今日を思い返すと、相手がしてくれたことがいくつか浮かびます。朝、ゴミを出してくれたこと。帰りに牛乳を買ってきてくれたこと。どれも小さくて、その場で「ありがとう」と言いそびれたまま、一日が終わっていきます。感謝日記は、そんな言いそびれた一つを、寝る前に1行だけ書き留めておく習慣です。立派な文章も、毎日の完璧な記録も要りません。
この記事でいっしょに考えること
パートナーへの感謝を、無理なく書き留めていく方法を紹介します。
- 感謝日記には、何を書けばいいのか
- ありがたいことを書き出す研究では、何が分かっているのか
- 書くことがない日は、どうすればいいのか
- 書いた1行は、相手に渡したほうがいいのか
感謝日記には、何を書けばいい?
パートナーへの感謝日記は、その日相手がしてくれたことを一つだけ選んで書くと、毎日でも続けやすくなります。書くのは「何をしてくれたか」と「自分がどう助かったか」をまとめた1行です。
感謝日記というと、一日の良かったことをいくつも並べるものを思い浮かべるかもしれません。けれど、始めたばかりの頃に項目を増やすと、書くこと自体が宿題のように感じられてしまいます。
そこで、最初は相手に関することを一つだけにします。書き方は、次の二つを並べるだけです。
- 相手がしてくれたこと(何を、いつ)
- それで自分がどう助かったか、どう感じたか
たとえば、次のような1行です(どれも私たちが考えた例です)。
- 朝、ゴミを出してくれた。おかげで、電車に一本早く乗れた。
- 帰りに牛乳を買ってきてくれた。明日の朝ごはんの心配が消えた。
- 疲れた顔に気づいて、先にお風呂を沸かしてくれた。肩の力が抜けた。
「優しい」「助かる」のような言葉だけで終わらせず、出来事を一つ添えるのがポイントです。あとで読み返したとき、その日の場面が浮かびやすくなります。
ノートは小さなもので十分です。スマートフォンのメモでも構いません。続けやすい場所に置いておくことのほうが、道具選びより大切です。

ありがたいことを書き出す研究で、何が分かっている?
ありがたかったことを定期的に書き出した人は、困りごとなどを書いた人と比べて、前向きな気分がいくらか高い傾向が報告されています。ただし、すべての指標に差が出たわけではなく、関係そのものへの効果を調べた研究でもありません。
心理学には、「ありがたいことを数える(counting blessings:感謝していることを定期的に書き出すこと)」と呼ばれる取り組みがあります。
この取り組みを調べた3つの研究では、参加者をくじ引きのように無作為に分けました[^1]。ある群には「ありがたかったこと」を、ほかの群には「困ったこと」などを、週ごとや日ごとに書いてもらっています。
その結果、感謝を書いた群は、いくつかの指標で幸福感が高く出ました。最も安定していたのは、前向きな気分の結果です。
一方で、すべての指標に違いが出たわけではありません。調べられたのは一人ひとりの気分や幸福感で、二人の関係がよくなるかどうかではありません。感謝日記を書けば幸せになれる、という約束でもないのです。
それでも、書く内容を「ありがたかったこと」に向けるだけで、一日の見え方が少し変わることはあるのかもしれません。今日できる一歩として、寝る前に、今日相手がしてくれたことを一つだけ、1行で書き留めてみてください。
相手に関することなら、その1行を、そのまま相手に渡してもいいのです。

書くことがない日は、どうする?
書くことが思いつかない日は、空欄のままにしておいて大丈夫です。毎日書くことより、思い出したときにまた1行書けることを大切にすると、感謝日記は長く手元に残ります。
同じ家にいても、離れて暮らしていても、相手とゆっくり話せない日はあります。忙しい週や、少し気まずいことがあった日には、何も浮かばない夜もあるでしょう。
そんな日は、無理に感謝を探さなくていいのです。書けない日があるのは、相手への気持ちが足りないからではありません。
それでも何か書きたいときは、範囲を少し広げてみます。
- 相手が整えてくれていた、家の中の小さなこと
- 今日、相手と交わした短いやり取り
- 相手とは関係ない、自分の一日でありがたかったこと
先ほどの研究にも、毎日ではなく週に一度書いてもらう群がありました。私たちは、毎晩でなくても、週末にまとめて一つ書く形から始めてもいいと考えています。
ノートの空欄は、書けなかった日の印ではなく、忙しかった日の記録として残しておけば十分です。
書いた1行は、相手に渡す?
書いた1行は、必ずしも相手に渡さなくて構いません。自分のための記録として続けながら、伝えたいと思った1行だけを、言葉やメモにして渡すと、無理のない形で感謝を外に出せます。
感謝日記は、本来は自分のための記録です。読み返せば、相手が日々してくれていることに、自分が気づき直す手がかりになることがあります。
一方で、書いているうちに、「これは本人にも伝えたい」と思う1行が出てくることがあります。そのときは、日記とは別に、短い言葉にして渡してみます。
- 翌朝、「昨日お風呂を沸かしてくれて、助かった」と声に出す
- 小さなメモに書いて、相手のカップのそばに置いておく
渡すかどうかは、その日の自分が決めていいことです。全部を伝える必要はありませんし、伝えた1行に、相手が何か返してくれることを期待しなくても大丈夫です。
感謝を書き留める習慣を、二人で続けてみたいときもあるでしょう。そのときは、「一日ひとつ、ありがとうを残す」を3週間続けた記事も参考になります。二人でノートを行き来させたいときは、夫婦の交換日記の始め方で詳しく考えています。

まとめ
感謝日記は、その日相手がしてくれたことを一つ選び、何をしてくれたかと、どう助かったかを1行で書くところから始められます。
ありがたいことを書き出す研究では、前向きな気分がいくらか高い傾向が報告されていますが、関係を変える約束ではありません。書けない日は空欄のままにして、週に一度でも構いません。
書いた1行は、自分のための記録として残しながら、伝えたい日にだけ相手に渡してみてください。今夜の1行から、静かに始めてみませんか。
[^1]: Emmons, R. A., & McCullough, M. E. (2003). Counting blessings versus burdens: An experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life. Journal of Personality and Social Psychology, 84(2), 377–389. https://doi.org/10.1037/0022-3514.84.2.377
